2018年3月16日

平昌2018パラ(8日目):バイアスロン

悲喜こもごものゴール。手ごたえと課題をつかんだ最終種目

999 | 障害者スポーツ専門情報サイト sports news

応援団の声援を背にスタートする高村和人

平昌パラリンピック大会は8日目となる16日、バイアスロン競技としては大会最終種目となる、男女インディビジュアル(男子15km、女子12.5km)が行われ、日本から5選手が出場した。風も強く春のような陽気だったこれまでの2種目とは異なり、この日は朝から雪が降りつづき、気温もマイナス4度前後と冬に逆戻り。少し弱まったものの風はやむことはなく、この競技が自然との戦いでもあることを実感させる。そんな中、出場した日本の5選手はそれぞれ悲喜こもごもの表情を見せた。

インディビジュアルという種目はバイアスロン競技のなかでは最も長距離種目で、男子が3km、女子が2.5kmのコースを5周し、1周するごとに射撃(1回5発)を行う。射撃のミス1発につき、ペナルティタイム1分が加算され、障がいの程度に応じたハンディ(係数)をかけて算出した「計算タイム」で順位が決まる。

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アクシデントもありながらも必死に滑る新田のんの

この日最初にスタートしたのは女子座位カテゴリーの新田のんの(21=北翔大学スキー部)。結果は1時間5分49秒0(射撃ミス1)の13位だった。射撃は20発中ミス1発で全体3位と高い命中率だったが、走りのほうは1回転倒してスキーが折れて交換したり、下り坂をコントロールしきれず、防御ネットに突っ込むなどタイムをロスした。

「射撃の嬉しさと、11位くらいを狙っていたので、悲しさの両方」とレース後は複雑な涙がこぼれた。明日17日には自身最終種目となる、クロスカントリースキー・ミドル(7.5km)を残す。「精一杯の走りをして悔いのない走りをしたい」と前を向く。

つづいて立位女子の出来島桃子(43=新発田市役所)が46分1秒5(同5)の9位。前の2種目で射撃ミスが多く、「ミスなく走り切りたい」と臨んだが、20発中5発をミス。「残念な結果になったが、風にも対応し、やるべきことはやれた。走りも、(気温が下がり)前のレースと比べてバーンが堅くなり、疲労を感じることなく最後までしっかり滑りきれた」と手ごたえは得た。残りのレースでもベストを尽くす。

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風を読みながら、的を狙う佐藤圭一

つづく立位男子は、まず、佐藤圭一(38=エイベックス株式会社)が49分39秒1(同3)で8位。自身初のパラリンピック入賞にも、「悔しい。メダルを目指してやってきたので・・・」と唇をかんだ。磨いてきた射撃も、風の読みに迷いが出た。走りも体のリズムとタイミングが合わず、思ったタイムには届かなかった。

冬のパラリンピックは3回目。スキーのトレーニングとして始めたトライアスロンでも、2016年リオ大会に出場し、夏冬パラリンピアンとなった「鉄人」だ。経験とともに射撃の精度も修正力もあがり、トライアスロンを取り入れてからは走力も確実に上がった。「成長は感じているが、結果を出す力がない。まだやらなければならないと感じたパラリンピックだった」。悔しさを糧に、まだまだ成長を続ける。

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初出場の大舞台を笑顔で締めくくった星澤克

一方、この種目が今大会最終種目となった星澤克(18=北海道立命館慶祥高等学校)は4分6 秒2(同4)で13位だったが、「今までより、いいパフォーマンスができた」と充実の表情を見せた。過去2レースはともに最下位だったが、この日は2選手に先着。

「ワックスマンのおかげでいい板を作ってもらえてしっかり走れたし、満射も1回あって射撃も自分の力は100%出せた。悔いの残らないレースが最後にできた」と話す星澤はまだ18歳。「4年後はもっと強くなって、この舞台に戻ってきたい」と初めてのパラリンピックを笑顔で締めくくった。

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大きな声援を送る日本の応援団

最後に、視覚障がいカテゴリーの高村和人(35=岩手県立盛岡視覚支援学校)は57分29秒3(同4)で13位でゴール。レース後に流れた涙は「悔しさと嬉しさと半分半分」と明かした。

病気で全盲となった高村は視覚支援学校の教員でもあり、2児の父でもある。約5年前にクロスカントリースキーをはじめたのは、全盲の自分が何かに挑戦することで、生徒や子どもたち、あるいは視覚に障がいがある多くの人に努力することの大切さなど伝えたいと思ったからだ。

この日は日本から駆け付けた家族や親せきがスタンドに陣取り、声援を送るなか、ひときわ大きく響いていたのが愛児たちからの「おとうさん、がんばって~」の声だった。「涙には悔しさもある。でも、精一杯やることはしっかりやれた。それに、辛いこともあったが、『人を応援すること』を覚えた子どもたちの成長も感じられて、ここまで来れて本当によかったと思う」

コンビを組む藤田佑平ガイドも、「去年の4月からフォームの修正をしてきた。このレースが集大成だったが、上りも下りも平地も、しっかり意識して滑れていた」と評価した。明日のクロスカントリースキーではもう一度、家族の声援を後押しに、有終の美を目指す。

【競技方式】
・射撃は1回5発を4回行う
・射撃のペナルティーは1発外すごとに走力タイムに1分が加算される
●記録内のPはペナルティー(射撃で外した数)。()は内訳
 例)P=2(0+1+0+1)
    =ペナルティー2(1回目+2回目+3回目+4回目)

【日本選手結果一覧(8日目)】

■立位(男子/15km)
8 位 佐藤 圭一 (LW8/38/エイベックス株式会社) 49分39秒1 P=3 (2+0+1+0)
13位 星澤 克 (LW8/18/北海道立命館慶祥高等学校) 54分6 秒2 P=4(1+0+2+1)

■視覚障がい(男子/15km)
13位 高村 和人(B1/35/岩手県立盛岡視覚支援学校)(ガイド:藤田 佑平) 57分29秒3 P=4(0+2+0+2)

■座位(女子12.5km)
13位 新田 のんの (LW10.5/21/北翔大学スキー部) 1時間5分49秒0  P=1(0+0+1+0)

■立位(女子/12.5km)
9位 出来島 桃子 (LW6/43/新発田市役所) 46分1秒5 P=5(1+2+0+2)

(文•星野恭子、写真・岡川 武和)

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