ジャパンパラウィルチェアーラグビー競技

ウィルチェアーラグビー日本代表、メダル獲得への課題

日本唯一のベストプレイヤー賞を獲得した乗松(JPN/No.22)

日本、苦戦。4チーム中最下位で終える

 ウィルチェアーラグビー日本代表は昨年10月〜11月のリオパラリンピックの予選を兼ねたアジアオセアニアゾーン選手権大会(以下、AOC)でロンドンパラリンピック金のオーストラリアに劇的な勝利をおさめ、世界ランキングは3位に浮上し、メダル獲得への期待が高まっている。

 5月19日から5月22日の4日間、2016ジャパンパラウィルチェアーラグビー競技が千葉ポートアリーナで行われた。アメリカ(世界ランキング2位)、オーストラリア(同4位)、イギリス(同5位)の3カ国が招待され、4カ国の総当たり戦を各2回行い、最終日に上位2チームが決勝戦、下位2チームが3位決定戦を行った。日本はリオ予選の勢いをそのままに優勝を目指したが、予選リーグ3勝3敗で決勝にはすすめず、3位決定戦でもアメリカに51-56で敗れて4チーム中最下位で大会を終えた。

 ウィルチェアーラグビーは四肢麻痺など、比較的重い障害のある人が競技できるチームスポーツとしてカナダで考案された。男女混合競技で1チームは最大12人で編成され、コートには4人が出場する。各選手は障害により持ち点が決まっており(障害が重いほど点数が低く、0.5から3.5までの0.5点刻みの7段階。持ち点の高い選手は「ハイポインター」、低い選手は「ローポインター」という)、1チームは8点以内で編成しなければいけない。出場4選手のチーム編成のことをラインといい、日本の主な編成はハイポインター2人とローポインター2人で編成するハイローライン(3.0-3.0-1.0-1.0 or 3.0-3.0-1.5-0.5)とはいポインターからローポインターまでをバランスよく編成するバランスライン(3.0-2.5-2.0-0.5 or 3.0-2.0-2.0-1.0)の2種類がある。

予選リーグ、複数のラインを試すも、決勝進出を逃す。

攻守の要であるキャプテンの池透暢(JPN/No.21)

 5月19日=大会初日=、日本はファーストラインの池崎(3.0※持ち点)-池(3.0)-若山(1.0)-今井(1.0)を軸に戦い、前半は24-23でリードするが、後半はイギリスの緻密なプレイにおされて、50-53とまさかの黒星スタート。続くオーストラリア戦、荻野ヘッドコーチ(以下、HC)は「リオを見据えてラインの強化が課題」と12選手をフル活用し、複数のラインを試すが、試しながら勝てるほとオーストラリアの力は甘くなく、55-64の大差で敗戦。
 
 20日=大会2日目=、日本はアメリカに52-48で勝利するが、エース池崎の負傷もあり、オーストラリア戦は50-57で敗れ、通算1勝3敗となり2日目終了時点で決勝進出を逃した。

 21日=大会3日目=、日本はここまで全勝しているイギリスを46-41で勝利するが、「(すでに決勝進出を決めている)イギリスは明日の決勝を考えてのメンバーであったので手応えは感じなかった」と冷静な反応。予選リーグ最後のアメリカ戦は55-54と接戦を制し、通算3勝3敗で予選リーグ3位となった。

3位決定戦、アメリカに地力の差を見せつけられる。

チャック・アオキ(USA/No.5)を振り切るエースの池崎大輔(JPN/No.7)

 22日=4日目=、日本は3位決定戦でアメリカと激突。アメリカはここまで若手育成に重きをおいた戦い方で予選リーグ全敗と振るわなかったが、「世界ランキング2位の意地を見せてくるはず」と警戒していたキャプテン池の予想どおり、スタートからベストメンバーの編成、対する日本もファーストラインの池崎-池-若山-今井で迎え撃った。

 第1ピリオド、日本はスペースをうまく作り、池のロングボールを若山がキャッチするパターンで得点を重ねるが、すぐにアメリカに対応され、厳しいプレスデフェンスでパスミスを誘われ、連続でターンオーバーを許した。日本も池、池崎の激しいディフェンスでアメリカに1ピリオドだけで4つのタイムアウトを使わせるが、15-16でアメリカがリード。第2ピリオド、日本は池崎-仲里(2.5)-官野(2.0)-岸(0.5)のバランスラインでスタート。
 
 第2ピリオド開始早々に、官野の激しいタックルでターンオーバーを奪い、17-17の同点とするが、パスミスや12秒バイオレーションなど連で続失点し19-22の3点差になる。ここで荻野HCは流れを変えるために、島川(3.0)-池-若山-今井のハイローラインにメンバーチェンジするが、点差を詰められず26-29で前半を終える。

 第3ピリオド、日本は複数のラインを使いながら追い上げを狙うが、アメリカの硬いディフンスを崩すことができず、37-41と更に点差を広げられる。

 第4ピリオド、池崎-池-乗松(1.5)-岸のラインで果敢にターンオーバーを狙うが、リードしているアメリカは堅実な試合運びで時間を使い、点差が中々詰まらないまま時間が経過。残り4分32秒で日本は池崎-池-若山-今井にファーストラインにメンバーチェンジし、最後の猛攻を仕掛けるが、焦りからパスミスが生じ、逆に点差を広げられ51-56で試合終了のホイッスルが鳴った。

チーム全体の底上げが急務

チーム最年長の岸(JPN/No.15)

 キャプテンの池は「4位という結果を受け止めないといけない。この悔しさをバネにやるべきことを個人個人でやっていく」、荻野HCは「非常に残念な結果。海外チームは日本のハイローラインの対策をしてきている。ファーストラインだけは勝てないのでチーム全体の底上げが必要」と危機感をあらわにした。

 今大会でMVPを獲得したオーストラリアのライリー・バッド(3.5)イは「日本(AOCで日本に負けてから)我々は今大会に向けて日本対策をしっかりやってきた」というように、世界ランキング3位になったことで、今まで以上に日本は海外からマークされる立場になってきた。

 昨年のAOCの決勝、オーストラリア戦ではファーストラインの4名と島川の計5名しか出場機会がなく、リオでメダルを獲るためにもセカンド、サードラインの強化が日本の課題だ。結果だけをみれば、4チーム中最下位だが、国際大会の舞台で様々なラインを試せたことは非常に価値がある。

 特に今大会から実戦投入した池崎-池-乗松-岸の新たなハイローラインの確立が大きな収穫だ。初戦こそ、荻野HCは「思ったよりよくなかった」という出来であったが、あきらめずに毎試合使い続けることで、乗松、岸が相手のハイポインターを押さえ込み、池と池崎がプレスをかけターンオーバーを狙うディフェンスの連携が強化された。乗松、岸がライリー・バッドやアメリカのチャック・アオキ(3.0)といった世界トップクラスのハイポインターを止めるシーンも見られた。

 岸は「ターゲットが明確なので止めにいきやすい。今までとは違うハイローラインがでることで相手に的を絞らせない効果がある」、荻野HCは「乗松は知識、経験を積んでいけば、リオまでにいい選手に仕上がる」と手応えを感じていた。今大会、日本唯一のベストプレイヤー賞を獲得した乗松は「自分の武器はスピードだと思っていたが、海外の選手は自分より持ち点が低くても速い。(リオまでに)もっと鍛えなければ」とさらなる成長を誓った。

 しかし、ハイローラインだけでは、今まで同様に池崎と池の2人を休ませる機会がないため、3.0-2.5-2.0-0.5と3位決定戦では使うことができなかった3.0-2.0-2.0-1.0のバラスンラインの強化は必須だ。セカンド、サードのラインがどこまでレベルアップできるかがリオ本番でのメダルの行方を左右する。

 日本代表は6月23日から6月26日にリオ前哨戦となるカナダカップに出場する。世界ランキング3位の実力を発揮してくれることを期待したい。

試合結果一覧

【予選リーグ】
GBR 53 - 50 JPN
AUS 63 - 52 USA
AUS 64 - 55 JPN
GBR 52 - 46 USA
GBR 52 - 46 AUS
JPN 52 - 48 USA
GBR 52 - 51 USA
AUS 57 - 50 JPN
AUS 63 - 56 USA
JPN 46 - 41 GBR
JPN 55 - 54 USA
GBR 49 - 58 AUS

【順位決定戦】
3位決定戦 USA 56 - 51 JPN
決勝 AUS 57 - 49 GBR

【最終順位】
1位 AUS
2位 GBR
3位 USA
4位 JPN

【ベストプレーヤー賞】
0.5 Jonathan Coggan(GBR)
1.0 Chad Cohn(USA)
1.5 乗松聖矢(JPN)
2.0 Gavin Walker(GBR)
2.5 Joshua Wheeler(USA)
3.0 James Roberts(GBR)
3.5 Ryley Batt(AUS)
MVP Ryley Batt(AUS)


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