対談企画① 車いすバスケットボール

ブンデスリーガ初挑戦 日本人トリオの「今」

(左から)豊島英、村上直広、網本麻里

今シーズンからドイツの車椅子バスケットボールリーグ・ブンデスリーガに所属する「Köln 99ers」でプレーする日本人3人、豊島英、村上直広、網本麻里に独占インタビュー。ドイツに渡ることを決意したその背景や、実際にドイツでプレーして思うこと、感じていることとは何なのか。3人の「海外挑戦」に迫る。

【海外挑戦のメリットは「毎週末に試合があること」】

―― 豊島選手は、ロンドン、リオデジャネイロと2大会連続で出場し、いずれも9位という悔しい思いを経験した中でのドイツ行きとなったわけですが、どんな思いがあったのでしょうか。

豊島: 「絶対に海外に行きたい」という思いは持っていなかったというのが正直なところです。ただ、「日本にいては、これ以上成長できない部分があるな」とは感じていて、少しだけ海外ということも視野に入れて考え始めていたところでした。そんな時に、タイミングよくKöln 99ers行きの話をいただいたので、「挑戦してみよう」と思いました。

―― 村上選手は、U23代表だった時の試合を今のHCが見ていたのがきっかけで、オファーが来たそうですね。

村上: そうみたいですね。偶然、その時の試合はみんながいい動きをしていて、僕のこともいつも以上に良く見えたんだと思います。

―― もともと海外志向ではあったんですか?

村上: はい。そこそこのレベルになったら、海外でプロとしてやっていきたいという気持ちがあったので、海外でプレーするということにずっと憧れていました。だから今回オファーをいただいた時に、このチャンスを絶対に逃したくないと思いました。英語は全くダメでしたけど、もし日本人が僕一人だったとしても、バスケができるのなら、英語は自分で何とかしようと思っていました。

―― 実際に、ドイツでの競技生活はいかがですか?

豊島: ほぼ毎日練習をして、毎週末に試合があって、というのは、日本にいる時には味わえない環境なので、新鮮に感じています。

攻守の要として活躍する豊島英

―― 網本さんは、オーストラリアなどの海外の経験もありますが、毎週末に試合ができるというのは、選手にとってどんなメリットがあると感じていますか?

網本: 常に「週末の試合に向けて」という気持ちで1週間調整しなければならないというのは、日本では絶対に味わえないことです。日本では、女子は春夏秋冬と、各季節ごとに1回ずつくらいしか大会がないので、試合に向けて調整するというよりは、どうしても練習の方に比重が置かれてしまうんです。でも、ここではこれだけ多くの練習時間をチームメイトのみんなと一緒にやることができて、毎週末に試合に臨むというのは、私にとっても新鮮ですね。

豊島: 男子も女子よりは大会があるけれど、言ったってそれほど多く試合ができるわけではないので、(網本)麻里が言ったみたいに試合に向けて調整と言っても、試合と試合との間が結構空いていたりするんです。そうすると、「今、自分たちはどこの目標に向かってやっているんだろう」というふうになってしまうところがあります。

―― 村上選手が所属する伊丹スーパーフェニックスは、日本選手権に出場できないこともあるとなると、さらに試合数は少ないですよね。

村上: そうですね。正直言うと、僕は日本にいる時は、すべて日本代表の合宿や遠征に向けて調整するという感じでした。チームとしての試合があっても、自分の中では「じゃあ、ジャパンでやろうとしているプレーをしよう」と、ひとりだけ別世界にいる感じでしたね。

【女子にも容赦なし。だからこその強さ】

―― Köln 99ersは今シーズン、新しいヘッドコーチを迎えて、選手も新加入がほとんどということで、まさに新しいチームです。現在、チームの雰囲気はいかがですか?

豊島: シーズンの最初はとても大変でしたよ。ほとんどチーム練習もできないまま、試合に入ったりしていましたからね。僕がドイツに到着した、その週末にもう試合があったんです(笑)。正直、何をしていいかも、ヘッドコーチが何をしたいかもわからず、全員が手さぐり状態でした。でも、最近では誰がどういうプレーをするかがわかってきましたし、うちのヘッドコーチは相手に合わせて戦略を考えるタイプなので、毎試合やることが違うんですけど、それはそれで毎回新しいことを学んでいけるというふうに感じています。練習も、その週末に対戦する相手に対して変えてくるので、毎日練習しても飽きないですね。

―― Köln 99ersには、網本選手も含めて女子が3人。2人は、リオデジャネイロパラリンピックで銀メダルを獲得したドイツ代表と、ベスト4だったイギリス代表。3人ともハイポインターということもあって、まさに熾烈な「スタメン争い」がチーム内で行なわれているというわけですよね。

網本: Köln 99ersのチームは「スタメンがどうの」ということはあまりないんです。スピード重視でいくスタートがあったり、高さ重視でいくスタートがあったりと、相手がこういうバスケをしてくるから、じゃあうちはこれで勝負しよう、みたいな感じでスタメンが組まれるので、毎試合メンバーが違ったりします。

果敢にゴールを狙う網本麻里

―― ドイツの女子代表が強いのは、やはりブンデスリーガで男子と一緒にプレーできるということが関係しているのでしょうか?

網本: それはあると思います。ドイツだけでなく、ヨーロッパのチームが強いのは、やっぱりブンデスリーガでプレーしている選手が多いからだと思いますね。

―― 実際、世界でもトップの男子と対戦してみて、どうですか?

網本: とにかく「すごいな」と思いました。ヨーロッパの人たちは、こういうレベルでやっているから、日本の女子と対戦する時なんか「こんなもんか」と思われているんやろうなって。

―― 試合を見ると、女子だろうとお構いなしに、相手はガンガンにプレッシャーかけてきますよね。

網本: もう容赦ないですよ(笑)。でも、こういう試合を1シーズン、ずっと繰り返してやっていたら、女子との試合では簡単というか、それほど相手に強さを感じないんやろうな、ということが、こっちに来てみて、身に染みて感じていることですね。

―― 豊島さんは、日本の宮城MAXではチームメイトの藤本怜央選手が対戦相手になっていますが、それについてはどうですか?

豊島: もともと僕自身、もし海外でやるとしたら、(藤本)怜央さんや(香西)宏昭とは別のチームに行きたいと思っていたんです。自分のスキルのためには、その方がいいかなと。

―― 村上さんは、Köln 99ersに入って、良かったと思うことは何ですか?

村上: ヘッドコーチが、すごくいいです。僕、毎試合後、ヘッドコーチに「何で今日の試合は、ああいうプレスをかけさせたのか」「あいつには打たせて、こっちは守っておけばよかったんじゃないのか」とか、意見を言うんですね。それを、ヘッドコーチはちゃんと聞き入れてくれるんです。それに「この間の俺のプレーはどうだった?」って聞くと、ビデオで試合全部を観て、「こういう時はここが良かったけど、もっとこうするとチームが強くなる」とかって、細かく言ってくれるんです。だから今、自分が成長できているなと感じることができているんです。ドイツに来て、本当に良かったと思っています。

村上直広。日々、成長を実感しているという。

1月31日現在、3人が所属するKöln 99ersは、7位と成績は苦しい状況にある。しかし、3人のモチベーションはまったく下がってはいない。日本では経験することのできない「バスケ漬け」の環境の中、自らの成長を感じているからだ。残りのシーズン、心技体いずれも磨きをかけるつもりだ。
(構成・斎藤寿子、写真・竹内圭)
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