2017年10月29日 

IWBFアジアオセアニアチャンピオンシップス

「3位」の裏にあった大きな「収穫」

史上初めてとなる「アジアオセアニアチャンピオン」の座を獲得するべく臨んだ「2017IWBFアジアオセアニアチャンピオンシップス」(AOZ)。男子日本代表は準決勝でイランに惜敗し、その道を閉ざされた。しかし、3位決定戦で韓国を破り、世界選手権のAOZとしては4年前の4位から3位に浮上と、着実にチーム力がアップしていることを証明するかたちで大会を締めくくった。そしてもうひとつ、チームには大きく得たものがあった。それは、追い求め続けてきた「全員バスケ」の本当の意味での「第一歩」だ。

【「壊す」ことで芽生えた競争意識】

2014年の世界選手権で決勝トーナメントに進出することができず、9位に終わった男子日本代表。主力の固定されたメンバーで戦うことの限界を痛感し、それ以降、求めてきたのが「全員バスケ」だった。

しかし、昨年のリオデジャネイロパラリンピックまでのチームは、やはり強度の高い試合では、藤本怜央と香西宏昭の「ダブルエース」に頼る傾向にあったことは否めない。

新たなチーム作りをする上で「覚悟」「本気度」を見せた及川晋平HC。

そんな中、2020年東京パラリンピックでのメダル獲得に向けて、及川晋平ヘッドコーチ(HC)は「一度、大胆にチームを壊して、再建していく」ことからスタートすることを決意。2017年は、メンバーやスタメン、ユニットなど、あらゆることを固定することなく、「壊し続ける」ことから生まれる力を引き出すことに注力してきた。

今大会でもスタメンは試合ごとに異なり、誰がエースでもなく、誰がレギュラーでもなく、その時の「ベストなユニット」を出す、という方針のもとで戦ってきた。そのため、今、選手の「競争意識」はこれまでとは比べものにならないほどに高い。

「求められたものに対して、きちんと結果を出す選手は残っていくし、当然使えない選手は切っていく」と及川HC。指揮官の言葉も、これまで以上に厳しく、それだけの「本気度」と「覚悟」がうかがい知れる。

幾度も日本のピンチを救い、オールスター5にも選ばれた香西宏昭。

【2013年に就任以降、初の試み】

今回のAOZでは、選手2人が体調不良を起こし、準決勝、3位決定戦は10人での戦いを余儀なくされた。そんな中、結果的には3位で終わったが、実は3位決定戦では非常に大きな成果を出している。それは、これまで「ダブルエース」として頼ってきた藤本と香西の2人がそろうユニットを一度も使わなかったことだ。

もちろん、これまでも格下の相手にはあった。だが、少しでもミスをすれば付け入る隙を与え、勝機を逃す可能性があるほどの強度の高い試合においては、2013年に及川HCが指揮官となって以来、初めての試みだった。

香西宏昭とWエースとしてチームを牽引してきた藤本怜央。

「今年は、藤本と香西に頼らないチーム作りということをテーマに掲げてやってきて、AOZでの課題のひとつでもあったんです。そんな中、韓国戦では一度も2人を一緒に使わずして勝ち切れたというところは、チームにとって非常に大きな収穫」と及川HC。今後、チームが進化するために絶対に必要な「試み」が、チームを「壊している」最中の2017年に実現したことは、チーム力アップを促すに違いない。

そして、その実現には、古澤拓也、鳥海連志、秋田啓、緋田高大といった、若手の成長があったからにほかならない。

今大会、アジアオセアニアチャンピオンという目標には到達しなかったが、「3位」という成績の裏には、それにも決して劣らない収穫があった。それが、今後に大きくつながるはずだ。

厳しいマークをされながらも持ち前のパワーと高さでシュートを打つ秋田啓。

次は、11月に国際親善試合「北九州チャンピオンズカップ」が控えている。今回のAOZとは異なるメンバー構成で臨む。

「北九州では、大舘秀雄、篠田匡世、福澤翔といった、今回のAOZに出場したハイポインターたちをおびやかす存在が入ってくるだけに楽しみですよね。さらに競争意識が高まる中でいいチームを作って、来年の世界選手権に臨みたいと思っています」

2020年東京パラリンピックでのメダル獲得に向けて、日本代表のチーム作りもさらに強度を増していく。それについていくことのできた12人だけが、3年後の世界最高峰のステージに辿りつくーー。

(文・斎藤寿子、写真・岡川武和)
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