2018年10月15日 

インドネシア2018 アジアパラ競技大会:ゴールボール女子(総集編)

「最低でも金」を合言葉に、「最高の金」を獲得

優勝が決まった瞬間喜び合う浦田理恵(左)、欠端瑛子(右)

ゴールボール女子の部には6チーム(日本、中国、イラン、タイ、ラオス、インドネシア)が出場した。総当たりのプール戦を経て上位4チームが準決勝に進む方式で試合が進められ、決勝に進んだ世界ランク6位の日本は同3位の中国を5-3で下し、金メダルを獲得した。

3回目となるアジアパラ大会を日本女子が制したのは初。プール戦から7戦全勝での快挙だった。中国に4-3、イランに6-2、タイに7-2、ラオスとインドネシアにはそれぞれ10-0で勝ち、準決勝でもタイを9-0で退けた。

アジア1位をめぐり、ライバル中国と対戦

2015年春から女子日本代表を率いる市川喬一ヘッドコーチ(HC)は、「最高です。総合大会で、2012年ロンドン大会以来となる金メダル。選手たちにはずっと、この大会で結果を残そうと言い、練習してきた。心から嬉しく思います」

ゴールボールは視覚障害者のために考案された、3人対3人で行う球技。全員がアイシェードなどをつけ、視覚を完全に遮断した状態で、鈴入りのボールの音や仲間の声、相手の足音や気配など「音」を頼りに相手ゴールに向かってボールを転がし、得点を競う。

選手自身は、「目」で相手のプレーや状況を確認できないため、事前のデータ収集によるシミュレーションや試合中にコーチなどコート外にいるスタッフから得る「情報」もプレーの手がかりとなる。ベンチ内外のチームワークも重要だ。

決勝戦序盤で2連続得点で流れを作った小宮正江


今大会の山場は初戦の中国戦だった。これまでも、何度も対戦してきた。ロンドンパラリンピック決勝では1-0で下して世界の頂点に立ったものの、連覇を狙った2016年リオパラリンピックでは準々決勝で当たって敗れ、5位に沈んだ。アジアでのライバルでもあり、再び世界の頂点に立つには中国は絶対に倒さねばならない相手でもある。

その重要な初戦では試合開始早々に中国に反則があり、ライト小宮正江がペナルティスローを確実に決め先制する。以後、体格の良さを武器に速くて重い球を投げ込む中国の攻撃を、日本はセンター浦田理恵を中心に壁をつくって凌ぐ。一進一退の攻防が続いたが、常に日本がリードする形で進み、4-3で日本が勝利。大会の流れを引き寄せる大きな一勝だった。

最大のライバルを破った日本はその後、危なげない試合運びで快進撃。一方、中国も日本戦以外はコールド勝ちなど、さすがの戦いぶりで白星を重ねた。

貴重な追加点を奪い、喜ぶ欠端

決勝で中国と再戦でつかんだ、栄冠と自信

両者が再び顔を合わせた決勝戦。市川HCは選手に、「僕らのほうが実力は上。気持ちでも負けるつもりはない。課題は決勝という舞台で、どれだけ自分自身をコントロールできるかだ」と送り出したという。

日本は立ち上がりから、小宮の連続ゴールで2点をリード。その後、両者一歩も譲らない攻防が続いたが、前半終了間際、中国が1点を返す。後半序盤にも中国の強打で日本の壁が崩され、2―2の同点となった。このまま、中国が波に乗るかと思われたが、前半8分から途中出場のレフト欠端瑛子がよくコントロールされた回転投げで、立て続けに3点を奪い、突き離した。

「中国は後半の追い上げが強いので、逆に自分たちの流れを作れるよう、強いボールを投げようと思ってコートに立った」と振り返った欠端は、「コーチから、『最低ラインでも金』と言われていたので、(優勝して)素直に嬉しい気持ちでいっぱいです」と笑顔を見せた。

日本の攻撃のパターンを増やす若杉遥


また、序盤の連続得点でチームに勢いを与えた小宮は、「全勝での金メダルは、みんなの力が一つになって獲れた結果なので、すごく嬉しい。一人が(ボールを)弾いても、周りがカバーする練習を繰り返してきた。その成果をしっかりと発揮できた」と力を込めた。

市川HCは、今大会を通じてつかんだものとして、「オフェンスの多様性」と「ディフェンスの柔軟性」を挙げた。日本は「守備重視」のイメージだが、ここ数年は攻撃力強化にも取り組んできた。欠端のパワフルな回転投げや若杉のバウンドボール、小宮や天摩由貴の移動攻撃など多彩な攻撃は有効で、今大会、1試合ごとの得点数も多かった。

後半得意の一文字ディフェンスに切り替える日本


一方、「守備の柔軟性」とは、相手の攻撃スタイルに合わせ臨機応変に対応することだ。日本はもともと「一文字型」を得意とする。鋭敏な聴覚でボールの方向を的確につかみ、3選手が絶妙な距離感で横一線となってつくる壁は、小柄ながら器用な日本選手の特徴を生かした形である。

だが、ロンドン大会以降、海外勢は守備の壁を跳び越すバウンドボールが攻撃の主流になる。国際試合で使うボールが弾力性の高いメーカー製へと変更され、バウンドボールの有効性がより高まったこともあり、日本は苦しめられた。

リオで連覇を狙った市川HCは一文字型に加え、センターを少し前に置く三角形の守備陣形も取り入れた。一枚目の壁が抜かれても、後方に控える2枚目の壁が対応でき、バウンドボールには有効な形と言われる。

東京2020パラリンピックでの金メダル奪還を目指す日本代表

決勝戦の後半、日本は同点にされてから、守備を三角形から一文字に変え、中国の追い上げを1点に抑え勝ちきった。市川HCは、「作戦通り。後半、中国がペナルティ覚悟で(激しく)攻撃してくるところをどれだけ我慢できるか。そのために、守備体型を変えた」と意図を明かした。

変更の目安は2失点だったという。リオでは臨機応変に守備を変える決断ができず、中国に畳み掛けられ敗れたが、今回は迷いなく動き、奏功した。「早いなと思った人もいたかもしれないが、僕を信じろと話した。(結果が出て)僕自身も自分の課題をクリアできたかなと思う」と覚悟の作戦を振り返り、安堵の表情を浮かべた。「リオでは悔しい思いをした分、感無量です。リオ後、チームを立て直そうとして、応えてくれた選手たちにも感謝したい」

結果的に、ゴールボール女子が獲得した金メダルは、今年のアジアパラ大会における日本のチーム競技が獲得した唯一の金メダルにもなった。アジア初制覇の次は、東京2020パラリンピックでの金メダル奪還がターゲットになる。攻守にわたる多彩さを武器に、日本女子はチーム一丸、挑み続ける。

(文・星野恭子、撮影・岡川武和)

【大会結果一覧】

予選リーグ vs 中国 4-3○
予選リーグ vs イラン 6-2 ○
予選リーグ vs タイ 7-2 ○
予選リーグ vs ラオス 10-0 ○
予選リーグ vs インドネシア 10-0 ○
準決勝 vs タイ 9-0 ○
決勝 vs 中国 5-3 ○

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